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それで男の映画を語るつもりかい?
20年以上映画の仕事を続ける企画・映画評論家のこだわる「男の映画」とは。そして彼が「男」にこだわる理由…そして映画と酒に濡れた彼の人生とは。この男のRSS

「楽しみが少ないのよ、あの世は」と言って美味そうに酒を飲む

映画を観終わったあと、やたらと食べたくなる物がある。

映画を観終わったあと、やたらと食べたくなる物がある。


僕の知り合いの女の子は、いつもの映画館で映画を観終わったあと、近くの店でパスタを食べる習慣がある。その店には50種類以上のパスタがあり、その時観た映画の印象でオーダーを決めるのだと言う。彼女のライフ・スタイルは、映画とパスタがセットなのだ。

こんにちは、マンハッタン坂本です。



僕は一度、友人の薦めで、オイル・サーディンの入ったパスタを食べたことがある。なんだか違った食感で美味しかった。
オイル・サーディンは昔、進駐軍イワシと言われていて、「大停電の夜に」の中でジャズ喫茶のマスター・豊川悦司がやっていたように缶詰ごと火であぶって醤油をかけ、単品で出されることが多い。洋の東西にかかわらず、の肴として最適である。



「居酒屋ゆうれい」のかづさ屋は、煮込みと常連の魚屋が持ってくる中とろが人気である。

嘘だったら出てくるよ、と死の間際に女房のしず子(室井滋)から言われ、のちぞいをもらわないと約束した主人の壮太郎(萩原健一)は、バツイチだが若くて元気でしかも美人の里子(山口智子)に見染められ、新しい女将として迎える。

彼女のお陰で店は客が座りきれないくらい繁盛し、ご機嫌で三遊亭圓楽の落語をTVで見ているところに里子が抱きついてき、その途端にTVの画面が砂嵐になりつむじ風が吹き、ぬーっとしず子が現れる。

それからというもの、毎晩のように出てきて二人をおどかすので、店に「オバケ有ります」の張り紙を出す。オバケとは、おばいけとも言い、クジラの尾ひれを酢漬けにしてさらしたもので、酢みそをつけて食べるが、たちまち売り切れてしまう。

「あんた、何かい、あのオバケってのはあたしへの当てつけ? 
幽霊コケにするとたたるよ」


居酒屋ゆうれい 居酒屋ゆうれい

渡邊孝好 監督
日本アカデミー賞最優秀助演女優賞(室井滋)受賞
キネマ旬報助演女優賞受賞


初めのうち怖がっていた里子は、壮太郎が大好きで寂しくて成仏できないしず子の姿を見て、一緒に酒を酌み交わし仲良くなる。だが壮太郎の方は、幽霊の掛け軸に入れて供養すれば出てこなくなると寺の和尚から言われ画策するが失敗する。

それでもしず子は、里子に乗り移って壮太郎の肩を揉んだりエッチをしたり、出所した里子の元夫(豊川悦司)を亡きものにしたり、揚句にこの世に戻れなくなる覚悟で、土下座して頼む壮太郎の常連を助けるために野球賭博に手を貸す。


里子に乗り移ったまま壮太郎と抱き合い、この世を去る瞬間にしず子に戻って壮太郎を見つめる笑顔は、たまらなく切なかった。


本妻と二号との三角関係の落語「悋気(りんき)の火の玉」やフランキー堺の映画「幽霊繁盛記」など、随所に幽霊ネタがあり、人情噺もあって落語のように楽しい。

▼居酒屋ゆうれい

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「異人たちとの夏」の40歳になるTVドラマの脚本家・原田(風間杜夫)は、子供の頃暮らした浅草を久々に訪れ、ふらりと演芸場に入り落語を見る。すると前の席に父親そっくりの男がおり、男は原田に気づくと程なくして出ようと声をかけてきた。

異人たちとの夏 異人たちとの夏

大林宣彦 監督
1988年
原作:山田太一


そのまま男のアパートに連れて行かれた原田は、12歳のときに交通事故で死んだ寿司職人の父親(片岡鶴太郎)と母親(秋吉久美子)がその当時のままで暮らしている姿を目の当たりにする。そして手厚くもてなされ有頂天となり、以後、頻繁に通うようになる。

昼来ても夜来てもまずはビール。昭和30年代に流行ったレトロなアイスクリーマーをぐるぐると回す母親の手伝いをし、下駄履きの父親とはキャッチボールをし、中年で知らないのかと言われつつ花札のおいちょかぶで盛り上がる。

だが死人に会う度に体が衰弱していく原田は、両親に別れを言わざるを得なくなる。


「お前を大事に思ってるよ」

「お前に会えてよかったよ。お前はいい息子だよ」



結局のところ、ご馳走するはずだったすき焼きを食べる暇もなく両親は消えていく。
手作りアイスクリームをおいしそうに食べる三人の姿が、心に残った。

▼【予告篇】異人たちとの夏




映画を観終わったあと、早速酒を飲みながらオバケを食したいと思ったが、実現したのは数年後で、昔食べたクジラの刺身よりは落ちるが、30年ぶりに味わう珍味だった。
手作りアイスクリームの方は、流石に無精者には手が出せなかった。


しず子が里子に酌をしてもらい、「楽しみが少ないのよ、あの世は」と言って美味そうに酒を飲むシーンがある。
もし化けて出らずに、あの世で映画と圓楽さんの落語を見ながら呑んだくれる方法があったら、教えてもらいたいものだ。


©Photo By roboppy



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この男について

マンハッタン坂本
マンハッタン坂本
初老の映画コメンテーター、54歳、独身。映画と酒を愛しすぎ、気がつけばこんな年齢。子供がいればもう成人しているだろうか、部下も息子といっても差し支えない年代に。されど人生に悔いなし!それは多くの感動と出会いに満ちあふれていたから。そんなヒトリライフを堪能する男のこだわり映画とは。
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